年々、勢力を増している台風。
その背景には「気候変動」があり、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼしています。
中でも特に深刻なのが「屋根」への被害。
屋根は住まいを守る最前線でありながら、暴風や豪雨の影響を最も受けやすい場所でもあります。
近年の台風は、過去の台風に比べてより強く、より多くの雨を降らせる傾向にあります。
これは地球温暖化により海面水温が上昇し、台風が発達しやすくなっているためです。
台風が大型化し、暴風域が広がることで、従来はあまり被害がなかった地域でもたびたび暴風被害が報告されるようになっています。
暴風による屋根被害は、単に風が強いから起きるのではなく、風の流れと圧力差によって屋根が“持ち上げられる力”を受けることが原因です。
暴風が屋根の上を吹き抜けると、屋根の表面の気圧が一気に下がり、屋内との間に大きな圧力差が生まれます。
このとき、屋根の外側は吸い上げるような力が働き、内側からは風が入り込んで屋根を押し上げる力が加わります。
つまり、上下から同時に“引き剥がす”ような力が加わるのです。
特に屋根の軒先や棟など、建物の構造上風の力を受けやすい場所では、この力が集中し、最初に屋根材のめくれ被害が発生します。
そして一度屋根材がめくれると、その隙間からさらに風が入り込み、連鎖的に屋根全体が剥がれることもあります。
屋根がめくれると、深刻な被害や二次災害につながる恐れがあります。
屋根材が飛ばされた部分から雨水が侵入し、室内や天井に大きなダメージを与えます。
やがて壁や床、家財が濡れ、徐々にカビ・腐食の原因に進行します。
また、屋根材の下にある防水シートや野地板がむき出しになってしまうと、構造材が濡れて劣化します。
このような事象が、長期的に見て建物全体の寿命が縮むことへつながります。
屋根がめくれるのを防ぐには、まず定期的な点検が非常に重要です。
最低でも年に一度、特に台風シーズン前と後には、屋根材に浮きやズレがないか?、釘やビスが緩んでいないかを確認しましょう。
雨どいや棟板金といった付帯部分のゆるみも見落とさないことが大切です。
もし屋根が老朽化していたり、台風による被害が心配な場合は、屋根材本体の見直しも有効です。ただし、高所での作業は非常に危険です。
屋根の状態確認や補強は、必ず専門の業者に依頼するようにしましょう。
屋根に求められる役割は「雨を防ぐ」だけでは不十分になっています。
暴風雨による屋根の飛散や、雹による屋根の割れなど、新たな被害が増えている現状に、「耐える」ではなく、「備える」ための屋根が、これからの時代に必要とされています。
【次回のコラム予告】
次回は、災害と屋根Vol.3をお送りいたします。