毎年のように日本列島を襲う台風は、私たちの生活に大きな影響を与えます。
その中でも特に被害を受けやすいのが、家を守る最前線にある「屋根」です。普段は静かに家を覆っている屋根も、台風の強風や豪雨にさらされることで一気にダメージを受けやすくなります。
では、実際にどのような被害が起こりやすいのでしょう。
台風による屋根材の剥がれや飛散
台風は、屋根材を浮き上がらせる力を持っています。
瓦やスレート、板金などが部分的にめくれたり、大きく飛散してしまうこともあります。
屋根材が剥がれると、その部分は直接雨水にさらされやすくなります。
通常は防水シートがあるためすぐに雨漏りするわけではありませんが、防水シートが劣化していた場合には、短期間で雨水が室内へ侵入し雨漏りにつながる場合があります。
また、飛ばされた屋根材そのものが凶器となり、近隣住宅や歩行者、車に被害を与える二次災害につながる点も見過ごせません。
破損して落下したスレート屋根材の破片
豪雨による雨漏り
台風が発生すると、普段よりも大量の雨が一気に屋根に降り注ぎます。
すると、屋根の谷部分や、板金の継ぎ目などは特に水が溜まりやすく、排水が追いつかないと雨水が内部へと侵入していきます。
さらに雨漏りは天井や壁紙を汚すだけでなく、断熱材の劣化や木材の腐食を引き起こし、住まいの耐久性そのものを損なう原因となるケースがありますので注意が必要です。
実際に起きた台風被害の事例
以前、台風シーズンの9月に関東地方で、築25年を迎えたスレート屋根のご自宅に台風が直撃しました。
一見、外から見たときには屋根材が大きく剥がれている様子はなく、当初は「被害はなかった」と安心していました。
しかし数週間後、突然天井にシミが現れ、現場調査を行ったところ、屋根材の一部にわずかな浮きがあり、そこから吹き込んだ雨水が防水シートを越えて下地材を濡らしていたことが判明しました。
もし、あのまま放置していれば野地板の腐食が進み、屋根全体の葺き替えが必要になっていたことでしょう。
また別の事例では、強風によって一部の棟板金が外れ、金属の部材が近隣の駐車場まで飛ばされてしまいました。
幸い大きな事故には至りませんでしたが、もし人や車に当たっていれば深刻な二次被害となっていたでしょう。
このケースでは、板金の固定釘が経年劣化で緩んでいたことが原因で、事前の屋根点検で修繕していれば防げたかもしれません。
台風被害を防ぐためにできること
屋根の被害を完全に防ぐことは難しいものの、被害を最小限に抑えることは可能です。
定期的な点検やメンテナンスを行い、屋根材の浮きやひび割れ、板金部分の緩みを早期に発見することが何より重要です。
また、台風シーズン前には雨樋や排水口の詰まりをチェックし、雨水が滞りなく流れる状態を整えておくことも大切です。
この台風シーズンは、屋根にとってもっとも過酷な時期かもしれません。
そんな今年の台風を無事に乗り切るために、今一度ご自宅の屋根を見直してみてはいかがでしょうか。
【次回のコラム予告】
次回は、思考を変えて「なぜ屋根への関心が低いのか?」です!