夏は屋根にとって劣化を加速させる季節です。
表面温度が一気に上がる日中と、放射冷却や夕立で急激に冷える夜。この加熱と冷却のサイクルが毎日繰り返されることで、屋根材とその下地は膨張・収縮を余儀なくされ、微細なひび割れや反り、留め付け部の緩みが静かに進行します。
そこに強烈な紫外線が重なると、塗膜や樹脂バインダーなど有機成分の結合が切られて粉化が進み、劣化状況は目に見えないところから目に見える段階へと移っていきます。
その「目に見えるサイン」の代表がチョーキングです。
チョーキングとは、手で屋根表面を軽くこすると白い粉がつく現象で、塗膜やコーティングの樹脂が紫外線と熱で分解され、顔料や充填材が表面に露出していることを示します。チョーキングが始まると表面の艶は失われ、撥水性も低下します。
夏は「熱・紫外線・水分」という悪条件が重なり合い、屋根の劣化を一気に加速させます。
他にも、線膨張の影響により貫板に留めた棟板金の釘が~台風時の風で飛散してしまう可能性もあります。
貫板に留めた棟板金の釘が徐々に浮いたりすると、台風時の風でバタつきやすくなります。
屋根材表層の塗膜が痩せると、切断面や傷部の防食性能は弱まり、雨だれ跡が「赤さび筋」として現れることがあります。
スレート屋根では、夏の熱応力で本体自体に微細な亀裂や反りが生じやすくなります。
細かなクラックは雨水の毛細管吸水を招き、乾燥時に再び収縮して割れが進みます。
表面塗膜がチョーキングして撥水性を失っていると、このサイクルはさらに強まります。
割れが目視できなくても、雨上がりに特定の箇所だけ濃く染みるような色ムラが続く場合、表層の吸水性が上がっているサインです。
夏の高温は「単独犯」というより、紫外線・水分・温度変化と結託して屋根を疲れさせる「共犯者」です。
「チョーキング」「艶引け」「棟の浮き」「シーリングの痩せ」「赤さび筋」
——これらは進行中のサイン。
お盆明けから秋雨前線の時期までを高温ダメージの点検期間と位置づけ、「清掃・点検・必要な補修」をひとまとめに行う習慣をつくることで、屋根の寿命を確実に延ばすことが可能になります。
暑い夏の季節を無傷で越える屋根はありませんが、傷を小さく、浅いうちに手当てすることはできます。
次の夏が来るまでに、点検や必要に応じた補修をして、次の夏に備えましょう。
【次回のコラム予告】
次回は、台風シーズン真っ只中!屋根で起こりやすい被害とは?